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飼い猫よりなによりこいつの方が手間が掛かるけれど、もう慣れたものだ。
気付けば10年こいつといるが、お互い他に伴侶を見つけるあてがあるわけでもない。もちろんそうなった時はこいつも人並みの幸せが欲しかったんだろうと送り出してもやるつもりだし、こちらが結婚するとなれば雲雀だって人のものに興味はないとでも言うだろう。
ただ、このままの関係が続くのも悪くはないと思っている。
喧嘩は昔に比べると減ったがないとは言わないし、食の好みも大して似ているわけでもない。服装だって頓着のない雲雀に手持ちの服を貸したり、雲雀の見立てた布で着物を誂えたりするけれど、正直全く気は合わない。
慣れだろうか。まあ、なんのかんので10年の付き合いになるがお互い適当な距離感でいられるから不便もないし、時折振り回されるのだっていつものことだ。
何よりそれを雲雀が許しているし、俺もそれで構わない。都合良く持ちつ持たれつできる、それだけの話だろう。
煙草を銜える。ライターの蓋を開けても雲雀は反応しなかったから、そのまま火を点けた。
こうして雲雀の機嫌を窺いながら煙草を吸うのも身に染み付いている。昔は問答無用で殴られて、目の前で煙草を吸うことなんて許されるはずもないと思っていたけれど、いつからだろうか。気付けば同じ部屋にいても、吸いすぎを咎められたり煙がうざいとか文句を言われることの方が多くなっていた。今はもう成人だし日本では喫煙が禁じられていない場所なら自由だけれど、雲雀が気にするのは法令よりも自分の意思だろうに。
煙を吸わせないように気を付けながら雲雀の寝顔を覗けば、それはいつもの寝顔だ。まぁ、要するに全てはこいつの気まぐれか。そう考えるとあれこれ推測を立てるのも馬鹿らしくなってくるな。
コーヒーをひとくち。本を開いて文字へと思考を移す。
夕食を何にするかということだけは頭の隅に残しておいた。
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