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目が覚めると、午前はほとんど過ぎ去っていた。昨日はチーズ屋に勧められるままワインに合うチーズを買ってしまって、ついでにワインも買って帰ったのだから仕方ない。
今日は遠出は無理だな、と欠伸をしながら隣を見れば大きな黒猫はまだおやすみ中だ。頭を撫でても起きる気配すらないから先に起きてシャワーでも、と思って抜け出そうとしたら捕まった。これはもう、雲雀が本気で起きないつもりのパターンだ。
「ヒバリ、寝るなら離せよ」
手首に絡む指を解いて布団に潜り込めば温もりを求めるように雲雀が頭を寄せてくる。携帯も鳴らないし、皆のいる日本ではなかなかこうゆっくり寝ていられもしないからたまにはいいだろう。
起こさないようそっと雲雀の髪を指で梳く。柔らかい髪の感触はふわふわとしていて案外気に入っている。ただ、こうしてゆっくり触れる機会は思うよりは少ない。お互いプライベートより仕事を優先しがちだし、そうするとどちらかは朝にはベッドから抜け出していることが多いからだ。それも性格に合ってはいるし、べたべたするのは性分じゃないからそれが当たり前だと思っているし、雲雀もそうだろう。
だからだろうか、時折10代目に休みを取るように言われるのは。どうも誤解されているような気がしてならないんだが、俺と雲雀は付き合っているとか恋人だとか、そういう事実はない。なし崩しにそういう関係になって以来、体の付き合いはあるが好いただの惚れただのという話はこの10年したことなどないのだ。所謂セフレというやつなんだけれど、それを10代目に説明するわけにもいかず誤解を訂正できないままにいる。特に雲雀なんて勘違いする方が悪いとでも言わんばかりに人の目を気にしないし、気付けばファミリーの中では我儘で扱いの面倒なこいつの相手を押し付けられるような形になっていなくもない。
本人はそんなことはどうでもいいのだろう。自由な浮き雲らしく好き勝手を繰り返して、ふらりと手の届く距離に舞い戻る。機嫌が悪ければ俺に八つ当たりをするが、他に被害が出るよりは余程いい。こと雲雀に関しては俺が避雷針を果たしているようなものだと苦笑が浮かんだ。
さて、このままベッドで過ごそうにも喉も乾いてきた。ぽんぽんと雲雀の頭を軽く叩くと掛け布団の中に頭の先まで潜っていく。
「ちょっと待ってろ」
その隙にベッドから抜け出して、一日雲雀の枕になっても良いように準備をすることにした。
濃いめのコーヒーを入れ、適当に作った生ハムのサンドウィッチを紙で包んで、ミネラルウォーターをボトルでひとつ。読みかけの本をサイドボードに用意すれば十分だ。クッションを背もたれに足だけベッドに戻せば、そのうちに雲雀に枕にされる。パン屑を落とさないようサンドイッチをかじり、コーヒーとで遅めの朝食を昼もかねて味わった。
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